映画 「必死剣 鳥刺し」
映画 「必死剣 鳥刺し」
藤沢周平の時代小説「隠し剣」シリーズの中でも、
現代に通じる傑作と名高い「必死剣鳥刺し」を
『しゃべれども しゃべれども』の平山秀幸が映画化。
剣豪であるがゆえに、過酷な運命に翻弄されていく
武士の心情が描かれていく。
悲運の剣豪・兼見三左ェ門を演じるのは豊川悦司。
三左ェ門の亡き妻のめいでありながら、彼にひそかな思いを抱く
女性・里尾を池脇千鶴が演じる。
観る者の心を揺さぶるし烈なクライマックスまで、目が離せない。
シネマトゥデイ
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良質な時代劇を見たという気がしました。
まずは藤沢周平の原作がやっぱりいいのです。
彼の作品は下級武士の悲哀などを描くものが多いようですが、
この作品も含蓄があり味わい深いものでした。
時代劇の映画らしいゆったりとじっくりと撮られた映像は、
かの時代の武士の暮らしぶりをリアルな感じで見せてくれました。
一時間のせわしないTVの時代劇ドラマではあり得ない、
映画を見ている、という幸せな気分にさせてくれたのでした。
家屋などのセットも見事で、また食事などのそれぞれの所作も
丁寧に美しく撮られていて好感が持てました。
ロケは山形あたりでされたようですが、日本にはまだまだ
時代劇が撮れるような美しいところが残っているのですね。
主演の豊川悦司は実直で寡黙な剣豪役にピッタリ。
関めぐみのトンデモない側室役は彼女にしては
珍しい役柄で異彩を放っていて楽しめます。
彼女のビッチぶりは私利私欲なのか、藩主を想ってのことなのか、
もうすこし彼女の登場場面が多くても良かった気がします。
この映画、山田洋次監督の藤沢周平作品のように
観終わってほのぼのとした気分にはさせてくれません。
不合理で理不尽で、主人公の無念さが痛いほど伝わる結末でした。
誰が得をして誰が損をしたのか、考えさせられてしまいます。
それでも前評判通りラストの壮絶な死闘は見応えがあり、
満足のいく出来映えに仕上がっていたと思います。
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