映画 「出口のない海」

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映画 「出口のない海」 を観ました。

今日は東銀座・東劇にてスニーク・プレビューでの試写会がありました。

上映された作品は、「出口のない海」。
いただいたチラシには、9月16日ロードショーとありましたので
一般公開にかなり先んじて観られることが出来、ちょっとうれしかったです。

人間魚雷「回天」を描いた映画です。
私のような中年以上の世代には、知らない者などいないでしょうが
神風特攻隊は知っていても、回天を聞いたことがないという若い方は多いことでしょう。

太平洋戦争末期、”天を回らせ、戦局を一転させる”という願いを込めて
開発、命名された特攻兵器が、回天です。
過去に何度か映画にもなっています。私もそのどれかを観たことがあります。

監督は佐々部清監督。
ちょっと生真面目過ぎるほど、丁寧で誠実な仕事をされる監督で
この作品でも改めて、それを感じました。

扱うテーマがテーマですので、おちゃらけた笑いは一切なく
終始緊張感を持続したまま、一気に見せてくれた映画でした。

冒頭のシーンは潜水艦の中でした。
息を潜めるように、エンジン音すらさせることなく、蒸し風呂のような艦内で
敵艦からの攻撃をやり過ごす場面は、緊迫感に溢れ
見ている我々のほうが、息苦しさを覚えるものでした。

記録によると回天は148基が出撃したものの、運搬途中に輸送艦ごと撃沈されたり
操縦も至難であり、首尾よく発進したとしても、見事敵艦に命中することはまれであったそうで
目覚しい戦果を伝える書物もありますが、かなりの艇が戦果不明のまま
海の藻屑と化したそうであるとのこと。

この映画はそのことを良く伝えてくれます。
手順も多く、ややこしい操縦法。
依然観た映画でも、演習中に兵が亡くなったりしたのですが
果たして極限下の実戦下において、あまりに無謀無茶な作戦であることは
現在の私たちの目には明らか過ぎるほど。

敗戦濃厚な時局にあって、回天こそ戦争の狂気、悲惨さの象徴であるように思えました。

市川海老蔵扮する並木は、自分の出撃が、もはや戦局を変えるものでも
自分の大切な人や郷土を守ることにもならないと悟っていました。
”自分は回天という特攻兵器が、存在したことを伝えるために死ぬのだ”と。

またこの映画で印象的なのは、”敵の姿を見たことがあるか”というセリフ。
国と国とが戦争をする。日本とアメリカが戦えば、日本人はアメリカ人の敵となる。
国家とは何だろうか。

とても真摯な良く出来た作品であると思いましたが
戦争末期を描いたものとして、どうしても昨年の 「男たちの大和 YAMATO 」と
比べられることになるでしょう。

(映画の中で主人公たちの乗った潜水艦と、沖縄に向かう大和が
豊後水道にてすれちがう、という象徴的なシーンがありました。)

「男たちの大和 」ほどお金を掛けた大作ではないので、派手な戦闘シーンなどは
「出口のない海」にはほとんどありませんが、戦争の無意味さを問いかけ、
その時代を生きた若者たちの夢や心の葛藤を描いて、遜色のない出来ではないでしょうか。

私は「男たちの大和 」に若干、滅びの美学のようなものを感じて
そこのところに引っ掛かるものを覚えたのですが、この作品は特攻を
感動的なもの、格好よく美しいものと捉えた描き方をしていませんでした。

またこの映画に出てくる若者たちは、明治大学の野球部などの学生たちで
本来がスポーツの好きな夢多き、快活な若者たちであるということも
伝わってくるものがありました。
それがまた映画を、暗く悲しいの一辺倒にせず、爽やかな余韻すら残してくれました。

ヒロイン役として上野樹里ちゃんが出て、とても良い表情を見せてくれました。
彼女がモンペ姿で畑を耕すラスト・カットは、とても美しく印象的でした。
ただし彼女と主人公並木との絡みのエピソードは、ちょっと食い足りず
もうすこし膨らませて、登場シーンを挿入してくれるとうれしかった気がします。



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